研究概要 |
【目的】小腸移植後のグラフト機能を評価する上で、昨年度の同系(Lewis-Lewis)に加え、平成10年度では、胆汁酸分画の変化が拒絶反応を反映しうるか否かをラット小腸モデルを用いて、病理組織像、サイトカインについても合わせて検討した。 【方法】LewisラットとBrown-Norwayラット(体重250〜300g)を用いて一期的同系及び異系同所性全小腸移植を行った。グラフトの動静脈はレシピエントの大動脈、下大静脈に各々端側吻合した。Group 1:sham op群、Group 2:iso-graft(Lew)群、Group 3:allo-graft(BN→Lew)群、Group 4:Group 3にFK506を術当日より連日0.5mg/kg筋注した4群(n=8)を作成した。術後7日目に検体を採取し、胆汁中、血清中の胆汁酸分画(24種)を高速液体クロマトグラフィーで測定した。 【結果】(1)病理組織像:回腸の組織像ではGroup 1,2.4の間にはほとんど差異は認められず、Group 3でのみ(1)絨毛の平定化、(2)全層にわたる細胞浸潤、(3)上皮の脱落など、中等度の急性拒絶反応が認められた。(2)胆汁酸分画:胆汁中総胆汁酸排泄量には各群間で差は認めなかったが、血清中総胆汁酸濃度は、Group 2,3,4でGroup 1より有意に上昇していた。大循環へのドレナージの影響と思われる。胆汁酸分画については、Group 3でのみ胆汁中、血清中ともに二次胆汁酸の比率が増加し、一次胆汁酸の比率が減少していた。詳細にみると、Group 3で、コール酸が有意に減少し、デオキシコール酸が有意に増加していた。(3)血中のサイトカインについては、TNF-αは各群間に有意差はなく、IL-2はGroup 1に比較しGroup 2では上昇し、Group 3,4では減少した。Group 3,4間に差はなかった。INF-γはGroup 3で有意に上昇していた。 【結語】allo-graft小腸移植では急性拒絶反応がみられる時期(7日目)に血中、胆汁中の有意な二次胆汁酸の増加、一次胆汁酸の減少が認められ、それが免疫抑制剤(FK507)投与で是正されることから、この胆汁酸分画の変化は小腸移植における拒絶反応の指標になりうることを示唆する。
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