研究概要 |
樹状突起細胞(以下Dendritic cell;DCと略)を用いた癌特異的免疫療法の可能性を検討することが本研究の目的であった。本年度はわれわれはが、確立した、自己腫瘍系を用いた実験系と、HLA-Class Iを合わせた非自己腫瘍細胞系でおこなった。(結果)HNPCCの大腸癌患者の腫瘍組織から確立した大腸癌細胞株EG-1を、放射線処理(3000rad)または凍結/融解による破砕処理を行った癌細胞を、同患者及びHLA-Classs IにCross reactionする非自己健常人の末梢血単核球よりDCをGM-CSF,IL-4を用いて分離/培養した。40mlの採血より0.5ないし1 millionのDCが得られた。(しかしこの細胞数は、後に腫瘍特異的Tリンパ球を得るには必ずしも十分ではないことがわかった。)このDCに放射線処理(3000 rad)または凍結/融解による破砕処理を行った癌細胞を加えさらに2週間培養し、癌関連抗原を提示すると期待されるDCを得た。またEG-1がもつ既知の癌関連抗原のうち、Muc-1とMage-1のSynthetic Peptideを用いたDCの刺激もおこなった。このVaccine化DCでリンパ球を、低濃度IL-2,IL-4を用いて共存培養することにより、自己腫瘍に反応するT細胞が得られるか検討したところ、確かにDCで刺激することにより、リンパ球の活性化を示す、IL-2とIFN-gammaのmRNAの発現が誘導されたものの、自己腫瘍に対する殺細胞活性は十分ではなかった。従って次年度では、DCをさらに数多く得るための方法と、自己腫瘍に対する反応性を殺細胞活性以外の方法、例えばサイトカインの放出能(IFN-gamma)で検討する予定である。またDC-刺激T細胞を、活性化自己リンパ球として移入するために必要なリンパ球培養法について検討する予定である。
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