研究概要 |
樹状突起細胞(Dendritic Cell;以下略してDC)は、抗原提示細胞としては、最も強い抗原提示能を有する細胞である。本研究はAutologousのシステムを用いたDCの腫瘍ワクチンとしての臨床応用を目的とする。特にAutologousの大腸癌細胞とDC及びT細胞を用いて癌抗原特異的DCの樹立を試み、次に自己腫瘍特異的細胞を効率よく誘導するために腫瘍特異的DCの培養法を検討することに重点をおいた。最初に我々は、38才の男性の手術時摘出標本より樹立された癌細胞株、大腸癌細胞CEG-1、のHLAタイピングをした結果、HLA(All,31)であったため、患者自身及び、このHLA TypingにサブマッチしたHLA(A26,31)の健常人のDCとリンパ球を用いて、腫瘍特異的DCの樹立を試みた。DCは末梢血採血から分離した単核球より、IL-4、GM-CSFを用いて血液100mlあたりより、1〜2x10^6個のDCが常に得られることがわかった。得られたDCに、放射線照射CE-1細または凍結・解凍を繰り返した癌細胞破砕産物を加え、さらにIL-4,GM-CSFを加え培養を続け、腫瘍ワクチン化DCを得た。まず、このDCのCytokine産生能をみたところ、IL-12,IFN-gammaのmRNAの発現とそれぞれの蛋白発現が確認された。このDCはHLA-DR,CD80,86強陽性で、抗原提示細胞として適当と考えられた。このDC(患者及びHLAサブマッチ)にそれぞれ、患者またはHLAのマッチした健常人のリンパ球を加え、二週間培養し、さらにもう一回ワクチンDCを加え二週間培養し、リンパ球の自己腫瘍傷害活性をみたところ、約10〜30%の活性とIFN-gammaの放出がみられたことより、DCのワクチン化が示唆された。しかしながら、当初の目的のひとつである、DCの大量培養に関しては、ゼラチンビーズを用いてDCの高密度培養を試みたが、現在のところ通常のプラスチックシャーレ内培養に比較して細胞数の有意な増加には未だ成功おらず、さらに今後の検討が必要である。
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