研究概要 |
1.胆嚢癌株細胞に対するペプチド成長因子の形態形成作用. 我々が樹立した胆嚢癌株細胞GB-d1と,先に分与を受けたKMG-C(久留米大学第1病理学),GBK-1(熊本大学第2外科),G-415(筑波大学内科)それぞれについてコラーゲンゲル内浮遊培養を行い,各種ペプチド成長因子(HGF,EGF,TGF-β1)の形態形成作用について観察した.GB-d1は主として球状嚢胞形態を,KMG-Cは充実性球状細胞塊形態を示し,いずれも非浸潤性膨張性発育形態を示した.対してGBK-1は放射状分枝形態で,G-415は細胞質が樹枝状に伸展した形でゲル内に浸潤性に発育した.EGF,HGFはGB-d1,GBK-1の分枝状管状形態形成,G-415の細胞質の樹枝状伸展を促進したが,KMG-Cでは細胞塊構造の形態そのものには作用が乏しく細胞のゲル表面への遊出傾向を促進するのみであった.TGF-β1は形態形成抑作用を示す傾向にあり,特にGB-d1とGBK-1細胞はその生育が妨げられた. 2.胆嚢癌株細胞の接着因子発現と形態形成. 1で明きらかにしたペプチド成長因子の作用の株細胞種による差異にはその接着因子(E-カドヘリン-カテニン複合体,インテグリンなど)の発現,機能が関与している可能性を考えた.各株細胞よりタンパクを抽出し,ウェスタン・ブロット法でE-カドヘリン,α-カテニンの発現を観察した.その結果,非浸潤性発育を示したGB-d1とKMG-Cでは両者の発現が確認され,浸潤性発育を示したGBK-1とG-415ではα-カテニンの発現は見られたが,E-カドヘリンの発現は見られなかった. 3.以上により株細胞のゲル内における浸潤性形態にはE-カドヘリンの機能低下や欠失が関与している可能性が示唆された.さらに,EGF,HGFが促進する管状・樹枝状形態との関連も考えられた.
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