研究概要 |
胆嚢癌の増殖・形態調節機構を調べるために、コラーゲンゲル内三次元培養下で異なった増殖形態を示す4種類の低分化腺癌由来胆嚢癌株細胞(GB-d1,KMG-C,GBK-1,G-415)を用いた。立体培養することにより、GB-d1はゲル内で腺管様の嚢胞形成を示し、KMG-Cはスフェロイド様の集塊を形成し、それぞれ高分化腺癌、中分化腺癌と類似した。一方、GBK-1は分枝状の形態をとり、G-415はロゼット状の偽腺管構造を示し、由来の低分化癌と類似した。ここでrimming操作により、ゲルを遊離、浮遊させると、GB-d1のみ嚢胞形成が促進される形態変化が観察されたが、他の株細胞では形態変化を認めない。E-cadherinとα-cateninの発現をみると、GB-d1,KMG-Cのみに発現されており、免疫組織染色において、浮遊ゲル培養のGB-d1では嚢胞形成細胞に均一に発現されているが、KMG-Cではスフェロイドの辺縁細胞にのみ発現されている。電子顕微鏡観察でも前者にのみ成熟したinterdigitationやjunctional complexの再形成を確認した。Western blottingによる両蛋白の定量ではα-cateninは2つの株細胞および培養法による差異を認めなかったが、E-cadherinはGB-d1の浮遊ゲル培養においては通常ゲル培養の2倍の発現増強が認められた。また、ヒトE-cadherin抗体によりGB-d1の嚢胞形成は完全に抑制された。以上本研究により、胆嚢癌の分化度は周囲環境のextracellular matrixによってE-cadherinの発現を通して調節されていることが示唆された。
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