【目的】直腸癌低位前方切除術におけるstraight型結腸肛門(管)吻合術(straight型)後の排便障害を軽減する目的で、下行結腸と残存肛門(管)との間に、ileocecal segmentをinterpositionするpouch手術(IIP型)を行い、その有用性を検討した。 【対象と方法】IIP型17例とstraight型26例を臨床像と排便機能((1)排便回数、(2)SITZMARKS【○!R】によるcolonic transit time、(3)manometric study)について比較検討した。 【結果】臨床病理学的因子・手術合併症については差を認めなかった。術後1/3/6/12/24/36/48月での排便回数は、IIP型では平均9.4/6.3/5.6/4.7/3.9/3.2/3.7(回/日)、straight型では平均11.6/7.6/6.4/5.1/4.1/3.9/4.5と、IIP型の方が少ない傾向を示した。SITZMARKS【○!R】によるcolonic transit timeでは、半量排出時間がIIP型では31.2±17.6(平均±SD)時間、straight型では65.1±38.8、健常成人では28.8±9.5と、IIP型は健常人に極めて近い値を示した。manometric studyでは両者に差を認めなかった。 【結語】直腸癌低位前方切除術におけるIIPによる再建術の特徴は、(1)pouchへのnerve supplyが温存される、(2)左側結腸の授動が不必要、(3)十分な長さのS状結腸が不必要、(4)pouch wallがintact、(5)diverting colostomyが不必要であり、従来行われてきたcolonic J-pouchの不利な点を示さない有用なpouch手術である。貯留能と生理的に近い吻合部口側腸管運動機能を得ることのできる本術式IIPは直腸癌患者のQOLを高める術式である。
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