研究概要 |
マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)は癌細胞の浸潤・転移に深く関与している。我々はこのうちMMP-7(マトリライシン)に着目し、これが大腸癌原発巣・転移巣のみに発現し、正常組織には発現しないことを確認した(Cancer Letters,107:5-10,1995)。そこで、ヒトにおける癌細胞の転移機構を再現する、ヌードマウスを用いた動物実験モデル(Meta-Mouse)を確立し、これにMMP-7のアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)を投与し、in-vivoでの転移抑制効果を検討し、癌転移抑制剤としてのアンチセンスオリゴの開発を目指した。 (1) ヌードマウス腸管壁および脾臓にヒト大腸癌組織(5-10mm3)を同所移植あるいは脾注入する。 (2) 移植直後にMMP-7のアンチセンスオリゴヌクレオチドあるいはコントロールオリゴを投与、4-8週間後に開腹堵殺し、あらゆる臓器における癌転移巣形成の有無を肉眼的、組織学的に検証した。さらにこの全肝より、mRNAを抽出し、ヒトbetaglobinのRT-PCRを行い、マウス肝内へのヒト癌細胞の混入を検討した。 その結果、マトリライシンAS群では大腸癌の肝転移をほぼ抑制できることが肉眼的にも、分子生物学的にも証明された。ただし、その一部には微小転移の遺残が認められたことより、tumor dormancyを引き起こしている可能性も考えられた。 以上より、マトリライシンASは肝転移巣内に移行する理想的な薬剤と考えられ、今後積極的に臨床応用を目指したいと考えている。
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