研究概要 |
過去約8年間の肝切除施行肝細胞癌(肝癌)患者における肝炎ウィルスマーカーをみると,約97%の症例の血清中にB型肝炎あるいはC型肝炎ウィルスマーカーが検出された.また残りの1%の症例の肝癌組織中にHBV geneが検出された.したがって本邦においてはほとんどの症例が肝炎ウィルスに関連していると考えられた.またHGVは検索された213例中12例に検出されたが,いずれの症例もHCVあるいはHBVマーカーも検出され,HGV単独感染例はみられず,肝癌との関連は少ないものと考えられた.HBV関連肝癌はHCV関連肝癌に比較し年齢は若く,大型肝癌が多くみられた.また肝切除や肝動脈塞栓術後のHBVの動態をみると,wild株陽性,術前ALT値の変動がみられた症例では術後HBV量の変動が増加し,それにひきつづいて肝炎再燃がみられることがあることが判明した.多中心性発癌症例はHCV感染およびHBc抗体陽性例に最も多く,次いでHCV感染例であり,HBV感染例では少なかった.HBV関連肝癌症例の肝切除の再発危険因子は,血小板10万/mm^3以下,wild株陽性,mutant株陽性,高ウィルス量,tw陽性,非系統的切除で,HCV関連肝癌症例のそれは,高齢,血清中HCV RNA陽性,AST・ALT高値,腫瘍径4cm以上,多発,門脈侵襲陽性であった.また現在,HCV関連肝癌切除後インターフェロン療法を行っているが,インターフェロン著効例の無再発生存率はその他の症例に比較し良好である.したがってHBV関連肝癌は根治性を重視した拡大切除が,HCV関連肝癌では完全切除のみならず高癌化病態対策が必要であると考えられた.
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