1.マウスを用いた実験系において同系腫瘍の皮下接種にて免疫した脾細胞もしくは所属リンパ節細胞を再度in vitroにて同腫瘍もしくは抗CD3抗体にて刺激培養することにより腫瘍特異的細胞障害性T細胞(CTL)が誘導された。このCTLは主にTCR Vβ3、5、7、8、11のレパトア群から成る細胞集団であったが、その中でTCR Vβ8陽性T細胞のみがIFNγ(Type1サイトカイン)を高産生しin vivoにて抗腫瘍効果を示し、TCR Vβ3、5、7、11陽性T細胞はIL-10(Type2サイトカイン)を主に産生し抗腫瘍効果を示さなかった。これより、T細胞の抗腫瘍免疫応答はTCR Vβレパトアにて決定されている可能性が示唆された。抗腫瘍効果を担っている特定のTCR Vβレパトアを活性化させる方法として、抗TCR Vβ抗体刺激やスーパー抗原刺激が有用であった。 2.ヒトにおいてCTLの誘導に重要なB7分子発現の欠損を補うため、樹状細胞を用いたリンパ球培養法が有効と考えられた。ヒト消化器癌抽出抗原やCEA、MUC1、MAGE-3等の合成抗原ペプチドをパルスした樹状細胞にてリンパ球を刺激培養することにより抗原特異的CTLが誘導され、それぞれの抗原に応答するTCR Vβ群の優位な増加を認めた。合成抗原ペプチド提示樹状細胞ワクチンを接種した症例では、抗原反応性のTCR Vβレパトア群の増加が認められたが、各TCR Vβレパトア群における免疫応答の解析については、今後のさらなる研究が必要とされる。
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