研究概要 |
本年度は消化器癌化学療法の効果発現とapoptosisの関連を検討するためにヌードマウス可移植性ヒト胃癌株(SC-1-NU)、大腸癌株(Co-4)を用い実験的化学療法を行った。移植した各治療群の腫瘍組織を採取し、TUNEL法を用いて腫瘍における懐死の程度、およびapoptosisの発現を検索した。実験的治療に使用した薬剤は5-FU(20mg/kg,5x/week),CDDP(1.5mg/kg5x/week)であり、それぞれの単独投与、および併用投与をSC-1-NUは6週(治療を6ク-ル)、Co-4は4週(治療を4ク-ル)施行した。移植腫瘍のestimated tumor weightを経時的に計測、算出し、治療終了後に腫瘍を摘出した。投与開始前を1としたRTW(relative tumor weight)は、SC-1-NUでは対照群で25.4±11.3であったのに対し、5-FU単独、CDDP単独、5-FU+CDDPの各治療群ではそれぞれ9.1±0.6,9.2±6.5,3.4±1.3と各治療群のRTWは対照群に比較し有意に小さく、また併用投与群ではさらに小さかった。Co-4でも対照群のRTWが27.7±19.3であるのに対し5-FU単独、CDDP単独、5-FU+CDDPでそれぞれ14.0±3.2,12.9±6.5,5.2±3.0であり、いずれの癌株でも併用投与の抗腫瘍効果が最も高いことを確認した。この治療効果とapoptosisの関連を検索する目的で、これらの腫瘍における懐死の程度(necrosis indexとして評価)とTUNEL法によりapoptosis (apoptosis indexとして評価)を検討した.SC-1-NUにおけるnecrosis indexは対照群で50.5±12.2であり、5-FU単独、CDDP単独、5-FU+CDDPでそれぞれ42.5±12.6,43.4±15.3,50.0±24.5,であり、各群に差を認めなかった。Apoptosis indexは、対照群で6.5±5.9であるのに対し、5-FU単独、CDDP単独。5-FU+CDDPでそれぞれ7.1±3.3,7.2±3.2,7.3±2.1であり、対照群に比較し高い傾向を示したが各治療群で有意差は認めなかった。Co-4でも同様の傾向を示した。これらの結果より、4-6週にわたる化学療法を施行した後の腫瘍ではいずれの治療群でも腫瘍組織の懐死が主体であり、apoptpsisは全腫瘍細胞の5-10%にみられるのみで、各治療群間のapoptosis indexに差を認めなかった。またこの時期に採取した腫瘍組織は懐死部分が多いため、腫瘍内の生細胞が比較的少なく、apoptosis indexの算出が比較的困難であった。またapoptosisをきたした腫瘍細胞は比較的少ないことより、現在治療開始早期に採取した比較的懐死部分の少ない腫瘍組織を用いてapoptosis indexを算出している。
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