研究概要 |
本年度は消化器癌化学療法の効果発現とapoptosisの関連をさらに検討するためにヌードドマウス可移植性ヒト胃癌株SC-l-NUを用い短期的な実験的化学療法を行った。各治療群の腫瘍紺織を採取し、腫瘍における壊死の程度とTUNEL法を用いてapoptosisの発現を検索した。実験的治療に使用した薬剤は5-FU(20mg/kg,5x/week),CDDP(1.5mg/kg5x/week)であり,推定腫瘍量が100-300mgに達した時点でヌードマウスをA群)対照群:生理食塩水(0.2ml/body)5日/週、B群)5-FU(20mg/kg)5日/週、C群)CDDP(1.5mg/kg)5日/週、D群)5-FU(20mg/kg)+CDDP(1.5mg/kg)5日/週、E群)CDDP(7.5mg/kg)1日間/1週、F群)5-FU(20mg/kg)、5日/週+CDDP(7.5mg/kg)1日/1週の計6群に分け、これらの投与スケジュールを1クールとし、薬剤を腹腔内投与した。それぞれの薬剤投与を1週間のみ施行した。昨年度はSC-l-NUを用いて同様の治療を4週間(4クール)行いこれらの化学療法のapoptosisに対する長期的効果を検討したのに対し今年度は短期的効果を検討した。この治療効果とapoptosisの関連を検索する目的で、これらの腫瘍における壊死の程度(necrosis indexとして評価)TUNEL法によりapoptosis(apoptosis indexとして評価)を検討した。長期投与後のSC-l-NUにおけるnecrosis indexは対照群で50.0±12.2あり、5-FU単独、CDDP単独、5-FU+CDDPでそれぞれ42.5±12.6、43.4±15.3,50.0±24.5であり、各群に差をを認めなかった。Apoptosis indexは対照群で6.5±5.9であるのに対し、5-FU単独、CDDP単独、5-FU+CDDPでそれぞれ7.1±3.3,7.2±3.2,7.3±2.1であり、対象群に比較して高い傾向を示したが各治療群で有意差は認めなかった。短期治療群のapoptosis index,necrosis indexは現在解析中であるがこれまでのところ対照群に比較し各治療群で明らかな差は認められていない。また短期投与後に採取した腫瘍組織は壊死部分が比較的少なく、細胞のDNA合成の指標となる腫瘍内のthymidylate synthase活性は長期投与後に採取した腫瘍に比較し明らかに高かった。このことは短期投与後の腫瘍細胞のviabilityは長期投与後の腫瘍に比べ明らかに高いことを示すものであり、さらに詳細なapoptosis indexの算出が可能と考えられ、現在解析中である。
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