研究概要 |
臨床例で肝不全憎悪因子の可能性のあるNitric Oxideについて検討し、小動物(ラット)の実験では肝再生因子、HGFの肝保護作用について調べた。また、portacaval shunt施行後門脈、肝動脈を結紮し、肝不全ブタモデルを確立した。試作の肝補助装置は、一つのreservoir、2個のperistltic pumpおよび短い回路により構成されoxygenatorは使用していない。ドナー肝の摘出は、肝移植時と同じ方法で行った。このliver support systemを用い1)肝不全ブタあるいは2)正常ブタの動脈血で摘出肝を灌流した。3)肝補助療法を施行しない肝不全ブタを対照とし、これらの生存時間、循環動態、血液生化学的データー等を検討した。1)、2)で24時間以上の肝灌流が可能であった。また1)、2)で摘出肝の肝静脈ケトン体比は1.0以上であった。酸素消費量、胆汁量はg当たり1)で高値を示した。一方3)では、高ピリルピン血症、高アンモニア血症、低血糖に陥り、肝不全作製後22.5±1.8時間(mean±SD,n=3)で死亡したが1)では,肝補助を施行している間は、アンモニア値,総ピリルピン値はそれぞれ214.4μg/dl,0.2mg/dl以下に、血糖値は80±11.8mg/dl(mean±SD)に維持し得た。本装置を臨床利用に向けて改良することにより、急性肝不全症例で一時的、代謝的肝補助療法の可能性が示唆された。次年度においては、肝不全の病態に関する更なる検討や臨床使用時の具体的問題点を明白にし、改良する予定である。
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