肝硬変形成過程のラットにHGFを投与し、その肝線維化抑制効果を確認した。またその作用機機序として Heat shock protein(HSP)70との関連を検討している。さらにHSP70は温虚血や熱処理をくわえることにより発現誘導されることから、我々は肝の虚血再潅流モデルにおいて、HGFの効果、その作用機構をHSPとの関連を含めて検討した。Wistar 系雄性ラットを用い、recombinant human HGFを72、48、24、12時間虚血前に陰茎静脈より投与、コントロール群はアルブミン添加生食のみとした。虚血操作は肝70%領域の門脈、肝動脈、胆管を血管用クリップを用いて、約60分間の血流遮断を行った。その後クリップを解除し再潅流とした。再潅流6、12、24時間後の血液生化学検査、肝組織病理学的検査、肝組織中HSP70発現量を検討した。血清AST、ALT、LDH値はHGF投与群において、再潅流12、24時間後に有意に低値を示した。 病理組織学的検査において、細胞増殖の指標であるproliferating cell nuclear antigen labelingindex、mitoticindexは、再潅流12、24時間後にHGF投与群において有意な増加を認めた。また虚血葉中HSP70発現をwesternb1ottingにて検討するに、HGF投与群において増加の傾向を示した。これまでにHSPの発現が、肝の虚血再潅流障害を軽減するとする報告より、HGFが虚血肝においてHSPを誘導し、また劇症肝不全などにおけるHGFの肝障害防止効果、つまり障害肝における肝再生促進効果により、虚血再潅流障害を軽減したのではないかと推察された。
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