虚血再灌流障害に対するHGFの保護効果をin vivoにて検討したが、今回初代培養肝細胞を用いたin vitroの系で、虚血や熱処理によりその発現が誘導されるHeat shock potein(HSP)70との関連を含めて検討した。また、炎症性サイトカインのインターロイキン-1β(IL-1β)は肝細胞の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を誘導しNO産生を促進することが知られ、さらにこのNOは細胞保護作用を有するとする報告もみられるため、この関連も評価した。Wistar系雄性ラットよりコラゲナーゼ灌流法にて単離を行い、HGF存在、非存在下で培養した肝細胞にIL-1βを添加し、低酸素および熱処理をくわえた。この際、低酸素処理にはわれわれの確立したアネロパック・セルシステムを用いた。この条件下で処理した後一定時間炭酸ガスインキュベーター内で培養し、培養液中NO、細胞内iNOSおよびHSP70の各蛋白質をWestern blotにて測定した。IL-1βによる培養液中NO産生は低酸素、熱処理群ともに阻害されていたが、HGF添加により阻害程度は減弱した。両処理により減少した細胞内iNOS蛋白質もHGFにより回復していた。一方、細胞内HSP70蛋白質は両処理群で発現を認めたが、HGF添加によりその発現の増強をみた。低酸素および熱処理というストレスによるNO産生低下に対するHGFの抑制効果は、NOおよびHSP70を介した細胞保護作用の可能性が推察された。
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