キラーT細胞(CTL)がMIIC拘束性抗原特異的に自家癌細胞を認識し攻撃することは知られている。食道癌の検体から自家癌細胞を認識するキラーT細胞(CIL)を誘導し、癌細胞上に発現しHLA-A24及びA26拘束性にCTLによって認識される癌拒絶抗原遺伝子を同定した。その遺伝子によりコードされるペプチドをSquamous ce11 carcinoma Antigen Recognized by T cells-1 (SART-1)と名付けた。さらにその抗原ペプチド領域(800アミノ酸と259アミノ酸)の蛋白質を決定し、ヒト大腸癌組織において発現しているかどうかを調べた。 抗SART-1ポリクロナール抗体を作製し、同遺伝子産物の大腸癌細胞株およびヒト大腸癌組織における発現を明らかにした。自家の食道癌細胞株をHLA-A24拘束性に認識するCTLが大腸癌細胞株を認識するかどうかを検討した後、SART-1の抗原ペプチドを用いて末梢リンパ球をin viroで刺激し、大腸癌を特異的に認識するCTLが誘導されうるかどうかも検討した。 大腸癌細胞株においてはSART-1_<800>が6例中全例に、SART-1_<259>が6例中4例に発現していた。大腸癌組織においてはSART-1_<800>が33例中18例に、SART-1_<259>は33例中13例に発現がみられた。HLA-A24拘束性に認識するCTLは大腸癌細胞株6例のうちHLA-A24かつSART-1_<259>が発現しているSW620のみを認識していた。SART-1抗原ペプチドを用いてHLA-A24をもつヒト末梢血リンパ球を in vitroで刺激すると、HLA-A24かつSART-1_<259>が発現している大腸癌細胞株SW620を特異的に認識するリンパ球が誘導された。 これらの結果からSART-1はヒト大腸癌の癌拒絶抗原となりうることがわかり大腸癌に対する痛特異的免疫療法の可能性が示唆された。
|