研究概要 |
食道扁平上皮癌は1996年までに69ケ所のpoint mutationの報告があるがこれらの報告のほとんどは海外からのものであり,日本人の食道癌p53の詳細な変異については未だ不明な点が多い.また従来p53のpoint mutationの多くはexon 5-8のにあるとされ研究はこの領域に限って行われてきたが近年exon 5-8以外の部位においても他の癌では変異が検出され始めており,食堂癌においても詳細な変異の解析のためにはp53 cDNAの全塩基配列を決定する必要があると考えられた. 【方法】3親等内に家族歴を有する食道癌3例(扁平上皮癌:2例,悪性黒色種:1例)でmRNAを抽出後逆転写の後にp53癌抑制遺伝子のexon2-11の両側にプライマーを設定してLA-PCRを行って全長にわたるcDNA合成を行う.これをTAクローニング,miniprep plasmid DNA purification後ABI-373Aシークエンサーを用いて全塩基配列を決定し,さらに新たにプライマーを設定してgenomic DNAをダイレクトシークエンスすることによりp53の変異の部位を確定した. 【結果】cDNAクローニングおよびシークエンスの結果からは,(1)食堂悪性黒色種ではp53の変異は塩基レベルで認められなかった.(2)クローンのシークエンスでは食道扁平上皮癌2例それぞれに3カ所のpoint mutationが認められたがダイレクトシークエンスで確定されたのは扁平上皮癌1例のexon10(1024塩基)の:CGA⇒TGA=(Arg)⇒(STOP)変異であった. 【結語】(1)手術切除標本からp53をはじめとした癌の遺伝子解析を行う方法が確立された. (2)食道扁平上皮癌2例ではp53のcDNAクローニング,シークエンスの結果からexon10のnonsense mutationを確定した.
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