研究概要 |
昨年度の研究において食道癌p53癌抑制遺伝子のExon10に新たなpoint mutationを検出したことから、すでに変異の確定したこの1例について合計150個の郭清リンパ節における同一遺伝子異常の有無を全ての郭清リンパ節においてPCR-RFLP法にて検討した。 【方法】ホルマリン固定後にパラフィン包埋されていたリンパ節1個ごとに6μMで3枚再度切り出しを行い、キシレン・エタノールで脱パラフィンを行った。 次にspin column法でQIAamp^<【.encircled?.】R【.encircled?.】>Tissue Kit(QIAGEN Ltd.,Hilden,Germany)を用いてgenomic DNAを抽出した。DNA抽出後PCRを行った後に、QIAquick^<【.encircled?.】R【.encircled?.】>PCR Purification Kit(QIAGEN Ltd.,Hilden,Germany)を用いてDNA精製を行い、DdeI制限酵素を使って平成9年度研究と同様のRFLPを行いcodon342の1024:C→T変異が存在するか否か全てのリンパ節について検討した。 【結果】150個のリンパ節の内6個のリンパ節でprimary tumorと同一のp53癌抑制遺伝子codon342の変異が認められ塩基レベルで転移陽性と判定された。3個のリンパ節は胃噴門部周囲リンパ節で、2個は左胃動脈周囲リンパ節であった。 残り1個のリンパ節は右反回神経周囲リンパ節であり、このリンパ節は従来の病理組織学的検査では転移陰性と判定されていたものであった。 【結語】従来の病理組織学的検査ではMinimal Residual Disease(MRD)が見落とされていた可能性が考えられ、MRDの検出のためには病理組織学的検査の他に分子生物学的手法が有効であると考えられた。この患者さんは3〜6カ月ごとに頚部超音波検査にて頚部リンパ節再発の有無をチェックしているが手術後3年を経過して無再発生存中である。
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