研究概要 |
申請者らの,小動物(ラット、マウス、ハムスター)を用いて心臓移植の基礎的実験的研究により、同種(ラットの異なるstrain間で)心臓移植実験においてドナーのリンパ球をレシピエントの胸腺内にあらかじめ移植しておくことによって、その後の心臓移植において急性拒絶反応が起こらず免疫寛容状態が生じることを確認した。これは1950年代にDr.Medawarらの発見した免疫系の未熟な新生児期にドナー細胞を移植しておくことにより成人後の皮膚移植に拒絶反応が生じない現象を応用したものである。上記の同種間で確立された免疫寛容誘導法を、異種移植に応用するのが本研究の目的である。研究の第一段階として、寛容誘導に適した条件を検討した。胸腺移植時のレシピエントの至適年齢(胎児、新生児期、成人期)として免疫系の未熟な新生児期を選択した.すなわち,ハムスターの脾細胞を採取し、新生児期ラットに抗リンパ球抗体を腹腔内投与した翌日に直視下に胸腺内へ移植する。抗ラットリンパ球抗体の投与は末梢血液中のリンパ球の除去を目的としたものである。その後(3週後)にOno-Lindsey法によりハムスターから既に上記の処置を施したラットへの異所性心移植を行う。結果として,未処置ラットであればハムスター心は平均3日で拒絶されるが,処置済みラットであっても心生着日数は延長しなかった.また,生後3-6週間の成人期ラットに対し同様の操作を行うと拒絶反応はむしろ促進された.即ち成人期では胸腺内異種細胞移植により感作状態となり,ひきつずく移植心の早期拒絶が認められたが,新生児期に胸腺内異種細胞移植された場合は感作されることはなかった.
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