背景)レシピエント胸腺内アロ抗原導入により同種心臓移植では実験的に免疫寛容が誘導されている。 目的)異種移植における拒絶反応に対するレシピエント胸腺内異種抗原導入の効果を検討する。 方法)Ono-Lindsey法による異所性(腹腔内)心移植モデルを用いた。Golden syrian hamsterをドナーとし、Lewis ratをレシピエントとした。心臓移植前にhamsterの脾細胞をratの胸腺内に移植し、その後心臓移植を行った。レシピエントratの条件として、新生児と成人を選び、また付加的な免疫抑制法としてcyclophosphamideおよびwhole body irradiation(WBI)を用いた。 結果) 1)無処置のコントロール群は平均3日で移植心は拒絶された。2)Hamster脾細胞を新生児ratの胸腺に移植した後、異種心臓移植を行った詳では生着期間は3日間と延長は認められなかった。3)Hamster脾細胞を成人ratの胸腺に移植した後、異種心臓移植を行った群では生着期間は数10分と超急性拒絶反応が認められた。4)WBIを行ってから、Hamster脾細胞を成人ratの胸腺に移植した後、異種心臓移植を行った群では生着期間は平均3日と超急性拒絶反応は抑制された。5)cyclophosphamide(抗体産生抑制)を投与してからHamster脾細胞を成人ratの胸腺に移植した後、異種心臓移植を行った群では生着期間は平均3日と超急性拒絶反応は抑制された。 結論) Allograftと異なり、xenogrft(concordant model)では胸腺内ドナー抗原導入にては免疫寛容は誘導されず、むしろ抗原感作により超急性拒絶反応を引き起こす。この反応はレシピエントに免疫反応が未熟な新生児を用いること、レシピエントの全免疫系をWBIで抑制すること、およびcyclophosphamideでB細胞による抗体産生を抑制する事により抑制された。異種心臓移植においては同種心臓移埴とは異なる免疫反応が胸腺内ドナー抗原導入後に発現することが明らかとなった。
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