自己広背筋使用心筋形成術の実施には長期の電気刺激が必要である。電気刺激トレーニングを要しない心筋形成術開発が望まれるが、骨格筋表現型の心筋型への転換を遺伝子工学や細胞工学手法を用いて行えるならば本法開発の可能性がある。我々は骨格筋より心筋で発現が著明なSERCA2の骨格筋での強発現により、心筋補助可能な骨格筋への形質転換が可能と考え実験を行った。細胞工学的見地から、心筋への分化能を有する心筋芽細胞を移植したHybrid型筋組織形成が有用と考えた。さらに遺伝子工学と細胞工学の両者により、SERCA2等の遺伝子が強発現するような心筋芽細胞を作成し骨格筋に移植可能か検討した。すなわち、培養心筋芽細胞に遺伝子導入が有効に実施可能か。次に導入遺伝子由来蛋白質は細胞外に分泌されるのか、移植細胞は骨格筋内で生着するのか、以上を目的に実験を行った。その結果遣伝子導入心筋芽細胞の骨格筋への移植により、周囲へ目的蛋白を分泌し、周囲の形質を転換しながら自ら骨格筋内に生着することを確認した。以上より遺伝子導入心筋芽細胞移植による心筋型形質骨格筋組織形成が、電気刺激トレーニングを要しない心筋形成術の開発に向け重要な手法になることを示すと考えられた。
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