「脊髄虚血の定量的評価」を主テーマとして、本年度は以下の二つの研究を実施した。 1.近赤外分光法により脊髄組織酸素動態計測用の硬膜外腔ファイバーと近赤外光発生装置を開発した。これらの特徴は下記の通り。 (1)805nmと685nmの2波長の近赤外光を交互にパルス点灯し、組織照射用ファイバーを1系列とすることができた。 (2)波長安定化回路を内蔵し、計測中の波長のズレを防止した。 (3)近赤外光発生装置は光送出口を汎用のものとし、他の生体組織等の計測も可能となるよう工夫した。Blood Laser AnalyZERを略しBLAZERと命名した。 (4)硬膜外腔用ファイバーは、2束の送受光用プラスティックファイバーを被覆し各々約60度の導入出角を有するように先端を加工した。 (5)硬膜外腔用ファイバーの直径を最大0.84mmとし、臨床で使用される硬膜外腔カテーテルよりも細径となった。 2.上記BLAZERと硬膜外腔用ファイバーを2頭のイヌを用いて実験使用した。 (1)硬膜外腔用ファイバーは経皮穿刺法で容易に硬膜外腔へ挿入できることが確認された。 (2)挿入後の送受光部の向きや位置を調節することは困難であった。 (3)低換気によるイヌの全身の低酸素状態によく追従し、組織中の還元型ヘモグロビンの上昇が観察された。 (4)胸部下行大動脈遮断でも脊髄組織中の還元型ヘモグロビンの上昇が観察された。 (5)BLAZERは、脊髄に刺入した組織酸素分圧モニターの計測値と平行して変動した。
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