本研究の目的は「手術による中枢神経系の虚血を迅速かつ正確に把握し、虚血による組織障害を回避する。」事であり、この目的に従い以下の二つの実験計画を遂行した。(1):中枢神経系(特に脊髄)の術中虚血を迅速、かつ正確に把握するための、近赤外分光法を用いた脊髄虚血モニターの開発。(2):(1)で開発した脊髄虚血モニターの定量性を検証するため、薬剤投与による脊髄虚血保護モデルの作成。 【(1)近赤外分光法を用いた脊髄虚血モニターの開発】 (1) ウサギ脊髄虚血モデルを用いて近赤外分光法にて脊髄組織酸素動態を計測した。 (2) 近赤外分光法による脊髄組織酸素動態計測用の硬膜外腔ファイバーを開発した。 (3) 硬膜外腔用ファイバーは、2束の送受光用プラスティックファイバーを被覆し、直径を最大2Frとし、硬膜外腔穿刺針を容易に通過可能なものとした。 (4) イヌ脊髄虚血モデルを用いて脊髄組織単独の酸素動態を計測した。 【(2)薬剤投与による脊髄虚血保護モデルの作成】 (1)で開発した装置のfeasibilityの確認と同時に、脊髄虚血保護実験の虚血モニターとしての利用価値を評価すべく、脊髄虚血保護実験モデルを作成した。 (1) ウサギの腹部大動脈を遮断し、脊髄虚血による対麻痺の発生を確認 (2) 脊髄虚血保護薬剤としてACPC(1-amino cyclopropanecarboxylic acid)を選択し、本薬剤を遮断直後に大動脈内投与し脊髄虚血の保護効果を判定した (3) 病理学的に本薬剤の保護効果を判定し有効性を証明した (4) 以上の実験で制作した、脊髄虚血保護実験モデルを用い、前記モニター装置で大動脈遮断中の脊髄虚血の均一性を、現在実験中である。
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