研究概要 |
本研究は肺癌における転移関連遺伝子やその遺伝子産物の表現を、肺癌の細胞株および臨床例において検討し、また肺癌転移に関連した新しい遺伝子のクローニングを試みることにより、肺癌転移の分子機構の一部を明らかにし、肺癌の転移診断や遺伝子治療の一助となることを目的とし、平成9年度より新規に開始された。 本年度は、基底膜破壊に大きくかかわり、癌転移において重要な役割を果たすとされるマトリックスプロティナーゼ(MMPs)およびその阻害酵素(TIMPs)発現を、肺癌切除例を用い組織レベルで検索した。その結果肺癌細胞株および肺癌組織におけるMMP-2の陽性率は高く、肺癌の湿潤転移では、MMP-2が重要な役割をはたすものと考えられた。またTIMP-2の陽性率も高く、肺癌組織では病期進行に伴い陽性率が高くなることから,TIMP-2はMMPsを抑制的に調節するとともに、腫瘍増殖を促進する作用も有する可能性があるものと考えられた。現在はこれら酵素の血中移行を確認するため、酵素抗体法を用い血中濃度を確認している。 今後は,マトリックスメタロプロティナーゼおよびその阻害酵素(TIMPs)の調節機構解明,マトリックスメタロプロティナーゼおよびその阻害酵素(TIMPs)の血中発現と転移との関連性、さらに新遺伝子の発現に向け、さらに研究を進めることを予定している。
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