研究分担者 |
窪田 博 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (70260388)
宮入 剛 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
中島 淳 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (90188954)
川内 基裕 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (00152918)
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研究概要 |
昨年度に引き続き、異種移植における拒絶反応の機序並びに有効な免疫抑制法を検討するため、異種移植後の免疫学的因子の変動及び免疫抑制剤の効果について検討した。 【対象・方法】ニホンザルをドナー、ヒヒをレシピエントとする同所性左片肺移植実験を8例に対し行った。生存期間を延長させるため、脾摘(移植前4日)・Tacro1imus(1mg/kg/day,i.m.)・ Methotrexate(0.05-0.5mg/kg/2-3times per week)を用いた免疫抑制療法を行った。レシピエントの移植後生存期間は6-48(平均19.6±13.8日)であった。レシピエントに対し移植後、抗ヒト白血球モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー解析により、末梢血中のリンパ球サブセット(CD4,8,20)の変動、及び抗種抗体価について検討した。また、剖検組織に対し病理学的及び免疫組織学的検討を加えた。 【結果】術前脾摘により、T・B ce11の各サブセット共に48%から66%の範囲で減少した。血中C3/C4の補体レベルには変化はみられなかったが、総IgG/Igmレベルは約80%程度に減少した。移植後末梢血リンパ球の各サブセットは増加したが、Methotrexate投与後速やかに減少した。各サブセットの比率には有意な変化は認めなかった。 抗種抗体価は移植後5病日まで変化はみられなかったが、長期生存した例ではその後術前の10倍以上に急増した。 剖検組織では、移植肺にはCD4,8(+)のT cellの浸潤は全く或いはほとんどみられなかったのに対して、CD20(+)B cellの経時的な血管周囲への浸潤が確認確記された。 【これまでの結果に対する考察】 concordant移植において、同種移植にみられる細胞性免疫を中心とした拒絶反応とは異なり、B cell・抗種抗体を中心とする液性因子が拒絶反応の主な因子となっていることが示唆された。脾摘や既存の免疫抑制剤投与により、完全に抑制することは不可能であるものの、その進行を緩徐にすることが可能であった。 discordant異種血管移植においては、抗種抗体による超急性拒絶反応が不可避であるが、既存の免疫抑制法によりその進行を抑制できる可能性が示唆されたと考えられた。
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