研究概要 |
われわれは触覚センサー(tactile sensor)を用いた局所心筋機能の評価法の検討を行ってきた。筒状型センサーを開胸下に犬の左心室表面、心外膜側に接触させて心拍動下の心筋の硬さ(tactile stiffness)を計測した。この結果、心筋の硬さの心拍動下の経時的変化の測定に成功した(Miyaji K,Furuse A,Kaneko Y,et.al.Regional myocardial stiffness measured by a new tactile sensor system.Jpn Heart J 1997;38:709-15)。心室の容積を変化させることで、計測された硬さ、stiffnessは容積に応じて変化したことより、計測されたstiffnessは従来より提唱されているstiffnessとは異なり、局所心筋の壁張力に相関していることが推測された。そこで、Sugaらが提唱したTime Varying Elastance の概念より導き出された心収縮能の指標であるE-maxと同様に心室容積を変化させて得られた収縮末期tactile stiffnessの変化の傾き(S-max)との相関を検討した。心機能を薬剤によって変化させたところ、様様な条件下で両者は極めて強い相関がみられた(R=0、89)。さらにArtsらが報告しているモデルより計算された心筋のfiber stressとtactile stiffnessとは様様な条件下で極めて強い相関がみられた(R=0.893)。以下の実験よりわれわれの計測したstiffnessは局所心筋の発生張力を表していることが証明された(Miyaji K,Sugiura S,Omata S,et.al.Myocardial tactile stiffness:A variable of regional myocardial function.J Am Coll Cardiol 1998;31:1165-73)。虚血性心疾患などの局所心筋機能低下を伴う疾患群においては局所心筋機能の評価は極めて重要である。
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