遺伝子導入の手段として静脈採取後内腔よりの潅流+外膜側よりのpluronic gelまたはpolaxamer gelを用いた持続的浸透法の可能性について、検討を行った結果、pluronic gelまたはpolaxamer gelの組織内貯留時間には限度があり、且つ生体内での適合性についての安全性が確立されていない点が将来の臨床応用にとって障害となる可能性が示唆された。従って、臨床で使用されている生体材料の接着止血剤であるFibrine glueの遺伝子導入の担体としての可能性について検討した。 家兎頚動脈を頚静脈で移植後、Fibrine glueをスプレーにて塗布し、1週、2週後その形状について病理学的評価を行った。塗布したFibrine glueは厚く静脈壁を覆った状態で2週間後においても静脈壁周囲に存在しており、外膜側からの遺伝子導入の担体としての有用性が示唆された。 一方で、in vitroの系で、virusを用いないリセプターを介した遺伝子導入法の有用性が確認された。現在、このリセプターを介した遺伝子導入法を、静脈採取後内腔よりの潅流または外膜側よりfibrine glueを用い、in vivoの実験系、すなわち、血管壁の組織培養にて遺伝子導入の効率、至適条件などについて検討中である。引き続き、家兎静脈グラフト移植モデルを用いて、上述した実験により決定された至適な導入法にて遺伝子導入した外頚静脈の静脈グラフトを用い、頚動脈への移植手術を施行し、遺伝子導入法の効果について検討する予定である。
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