研究概要 |
ウサギの腰動脈clampによる脊髄虚血モデルで、FPCの変化する腰動脈と動脈造影によって確認されるAdamkiewicz動脈との関係について検討してきたが、Adam-kiewicz動脈を含まない頭側の腰動脈群clampで、FPC波高の有意な低下を示す例があった.これを解明するために解剖学的検討を行った。8羽のウサギを用い、選択的腰動脈造影を行った後、犠牲死させ、2-4本の腰動脈を含む大動脈のsegmentにゼラチン入りバリウムを注入し動脈造影を行い、前脊髄動脈を確認した。4羽で、血管走行を肉眼で観察した。腰動脈より分岐した大前根動脈が、神経根とともに椎間孔より脊髄前面に至り、前脊髄動脈に合流した。前脊髄動脈は大前根動脈の合流部より尾側に太く伸び、頭側では細かったが途切れず連続した。また、大前根動脈の1椎体および2椎体、頭側のレベルにもそれぞれ細い前根動脈を4例全例に認めた。8羽で,ホルマリン固定、脱灰後、薄切標本にして前脊髄動脈の口径を計測した。大前根動脈合流部尾側の前脊髄動脈の口径は,合流前の動脈口径(最も細い部位)に比して,2.3倍〜5.3倍(平均3.3倍)の太さであった。以上から次のごとく考察した。 Adamkiewicz動脈を含まない頭例の腰動脈群clampにより,その部位の細い前根動脈の血流低下が起こり、Adamkiewicz動脈合流部頭側へ連なる前脊髄動脈が細い場合は、その当該腰髄の虚血を来しうる。そして,そのことがFPC波高の低下として表現される可能性が考えられた。
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