まず、昨年開発した下行大動脈解離の実験モデルの解離腔の長期開存性の検討を行った。 3カ月後に2頭、1年後に2頭、2年後に6頭剖検し、下行大動脈解離部位を肉眼的及び病理学的に検討したが、解離腔の開存率は100%であった。 これにより、この大動脈解離モデルに対し、何らかの治療を加えて解離腔を閉塞できれば、自然治癒ではないといえることとなり、非常に有用な実験モデルであることが確認された。 次に、下行大動脈解離に対し、急性期に血管内よりentryを閉鎖させ、解離腔を早期血栓閉塞させる為のdeviceとして、cylindrical balloonを開発した。 第6肋間開胸にて上記下行大動脈解離を作製した後、第10肋間開胸を加えて、下行大動脈、横隔膜直上より、逆行性にcylindrical balloonを挿入し、entryの部位の真腔内でballoonをinflate、entryを閉鎖した。 真腔及び解離腔の血流を経時的に血管エコーにて評価したところ、balloonをinflateする前は真腔、解離腔共に順行性の血流であったものが、balloon inflate直後より真腔は順行性、解離腔はre-entryからの逆行性の血流となった。 また、真腔の血流は経時的にほぼ不変であるのに対し、解離腔の血流は経時的に弱くなっていき、balloon inflate6時間後にはentry付近の解離腔の血流はほぼ消失した。 その時点でballoonをdenateし、血流の評価を行ったが、inflate中と変わらなかった為、entryは血栓閉塞していると判断し、balloonを抜去、閉胸した。 翌日、剖検したところ、解離腔は完全に血栓閉塞しており、また真腔内の血流は良好であった。以上の結果から、このcylindrical balloonは臨床応用可能な非常に有用なdeviceであると判断し、現在実用化に向けて実験を継続中である。
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