下行大動脈解離急性期に経皮的に挿入して偽腔を早期血栓閉塞させる血管内ステントグラフトを開発する目的で実験を開始した。しかしながら、以前からある下行大動脈解離動物実験モデルは、外科的にエントリーのみを作成する方法であるが、この方法では偽腔が血栓閉塞してしまい、自然治癒する率が高い事が我々の実験で確認された。その為我々は外科的にエントリー、リエントリー両方を作成するモデルを開発し、術後2年以上に渡って偽腔が100%開存する大動脈解離実験モデルを確立した。 このモデルを用いて、経皮的に血管内ステントグラフトを挿入する実験を行った。しかしながら、血管内グラフトにはgraft migrationを防ぐためにはグラフトを強く大動脈壁に押しつけなければならないが、そうすると、脆弱化した大動脈が破裂する危険性を高めてしまうと言うジレンマに陥る。従って我々は一時的にエントリーを閉鎖して偽腔を閉塞させる為に新たにcylindrical balloonを開発した。前記下行大動脈解離モデルにcylindrical balloonを挿入し、拡張させることによってエントリーを閉鎖し、真腔及び偽腔の血流の評価を血管エコーを用いて経時的に行っているが、今の所cylindrical balloonにて長くとも6時間エントリーを閉鎖しておけばballoon抜去後も偽腔は完全に血栓閉塞してしまうことが判っている。この方法は下行大動脈解離の急性期治療の画期的な方法として充分臨床応用が可能と考え現在実用化に向けて実験継続中である。
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