研究概要 |
心筋細胞の蛋白燐酸化酵素C(以下PKC)活性化による、虚血・再灌流中の心筋保護効果について、細胞内Ca^<2+>、pH及び収縮拡張能の指標である細胞長といった面から対照群と比較検討した。 成熟ラットより単離した心筋細胞を用いて、50分のchemical hypoxia(2mM NaCN,無glucose,pH6,7)及び、30分の再灌流を行った(対照群)。一方chemical hypoxia前に、0.1μMphorbol esterを5分間投与し、PKCを活性化した後、対照群と同様のchemical hypoxia再灌流を行った(aPKC群)。この結果、chemical hypoxia最終時点での細胞内Ca^<2+>は、対照群、aPKC群でそれぞれ前値に対するパーセンテージで、692±100%、322±42%(mean±SE)となり、aPKC群で有意に低値であった。同様に、細胞内pHは、それぞれ、6.55±0.02、6.72±0.03とaPKC群で有意に高値となった。また、再灌流30分後の細胞長は、前値に対するパーセンテージで、それぞれ40±2.7%、63±2.2%とaPKC群で有意に高値となった。 以上の結果より、虚血前にPKCを活性化することにより、虚血-再灌流時の細胞障害の原因の1つである、細胞内Ca^<2+>過負荷や、細胞内の酸性化が抑制されることを明らかにした。その結果として、再灌流時の心筋細胞の不可逆的な障害である、過収縮を防止し細胞長を保つことができたと考えられた。今回の実験により、PKCの活性化による、虚血再灌流時の心筋保護作用が確認された。今後の研究の展開として、PKCによる細胞内Ca^<2+>過負荷抑制のメカニズムを探るため、筋小胞体やNa^+-Ca^<2+>交換系等の阻害薬を用いて、それらの関与について検討していく予定である。
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