| 研究概要 |
dynamic cardiomyoplastyの心補助能力を規定する因子の一つとして,骨格筋の血流改善が重要である.我々はこれまでに,(1)広背筋の血行支配を解剖学的に解明し,(2)筋弁作成後に一定以上の血行改善期間(vascular delay)をおくことで血管新生が生じ血流が増加することを確認してきた.このvascular delay法は現在実際の臨床応用例に用いられているが,準備期間に長時間を要するために,速やかな治療が必要な心不全患者には用い難いという問題があった.また心移植に代わるものとして考えた場合,長期にわたる駆動に耐えうる血流を十分に供給できるかどうか疑問とされてきた.
我々はdynamic cardiomyoplastyの臨床応用をより身近なものとするために,vascular delay法のもつ諸問題を解決した全く新しい血行改善法を開発するべく,生体内の線維芽細胞増殖因子であるbasic Fibroblast Growth Factor(bFGF)を用いた方法の開発を行っている.
まず我々は,bFGFのslow release systemの開発に着手した.bFGFは移植後組織の血流により速やかにwash outされてしまうため,長期間接続する効果を期待するslow release systemが不可欠である.我々はcollagen-heparinの熱架橋体に着目し,これを応用したbFGFのslow release systemを用いることとした.
次に我々は,dynamic cardiomyoplasty作成の際に広背筋と心筋の間にbFGFを移植し,解剖学的に血行の変化が生じるかどうかを急性実験にて調べた.この結果肉眼的・光学顕微鏡的にはbFGF移植部周囲に微少な血管新生が生じていることを確認した.また広背筋と心筋間にまたがる微笑血管の存在も認められ,相互の血流改善に関与する可能性が示唆された.この実験結果については,現在血管新生の定量法に関して検討中であり,近日学会報告予定である.
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