小児用人工血管で口径拡大可能な人工血管を開発してきた。それは平織りの人工血管で強度の強いポリエステル繊維を強度の弱いポリエステル繊維の周囲に螺旋状に巻き、人工血管の横糸となし植え込まれた人工血管口径が小児の成長のため相対的に小さくなれば経皮的血管形成術で弱いポリエステル繊維を切断するというものである。そして以前より雑種成犬の胸部大動脈に移植し、口径6mmのものが9mmに拡大されることを確認してきた。 今回は植え込み期間の延長により肉芽組織がつよくなり、人工血管の治癒過程が進み難くなった人工血管でも拡大可能かどうかを検討した。平成9年にはこの人工血管を雑種成犬の胸部大動脈に移植した(n=10)。 6か月以上経た後移植人工血管を摘出し、組織学的に新生内膜と治癒の進行について検討を加えた。最長18ヶ月の移植モデルでも、人工血管繊維の劣化による口径の自然拡張は認めず、経皮的血管形成術で口径拡大が可能であった。また拡張後に仮性動脈瘤形成など、人工血管の劣化を示唆する所見は無かった。 以上の様に長期移植後においても安全に口径を拡張できる人工血管が開発できた。 この人工血管を小児の血行再建に使用すれば、PTA手技による口径拡大により、反復手術を回避しうる可能性があると考えられた。
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