研究概要 |
心房細動の発生・成立・維持の機序はいまだ十分には解明されていない。maze手術が洞調律への復帰としては有効であることが臨床的に明らかとなったが、心房全体の機能復帰からは問題点も多い。心房細動の機序と理論的根拠に基づいた治療体系を確立していくことが現在最も重要な課題となっている。 平成9年度は前研究代表者を中心に、基礎心疾患に合併した心房細動発生の機序と特徴を主として術中の心表面マッピング検査結果から明らかにし、機序に応じた新しい簡略化外科的アブレーション手術法を開発し、臨床応用を開始し始めた。平成10年度は前年度の成果を基礎に、非侵襲的検査も含めた電気生理学的および病理学的解析を重ね、各々の心房細動進行のスペクトラムに応じて、外科治療からカテーテルアブレーションを含む各種インターベンション治療の適応に関して検討した。 具体的には、基礎心疾患に合併した心房細動症例を対象とし、まず術前に12誘導心電図および体表面電位図にて各32心房波形からの特徴を型分類した。この結果および術中時の心房表面マッピング検査から心房内圧・容量負荷により心房壁が伸展することが心房細動の成因に最も関与していると考えられた。一方、心房細動の原因となりやすい解剖学的障壁が左房の肺静脈入口部で最も大であり、心房細動心の肺静脈口径は正常心より拡張していることを剖検心臓で確認した。外科的治療としては心房負荷軽減と心房細動発生源であることの多い左房後壁に対する外科的アブレーションのみを行うことで多くの症例では十分ではないか、と考えられた。このような結果に基づいた簡略化述式を約30例に行い、現在、術後の調律と心房収縮能に関し、術後1,3,6,12,18,24カ月後に各々ホルター心電図および心エコー図検査にて追跡調査中である。
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