成犬(ビーグル犬、体重6-11Kg)を使用して、レーザーによる心筋血行再剣術の急性期から慢性期にかけての実験結果は、術後1-3ヶ月仕には、レーザー照射域の心筋局所機能は改善していた。特に、3ヶ月時に有意に改善していた。しかし犠牲死させた成犬の心筋組織には、はっきりとした新生血管の再生が確認できたものは20%であった。6ヶ月後に犠牲死させた3頭の病理所見からも新生血管の再生と考えられるものは1/3頭であった。これらの所見も、明らかに連続性を持って新生血管が再生されたと考えられるものは、1例もなかった。術後1年後に犠牲死させた慢性犬においても、新生血管の明らかな連続した再生(形成)は認められず、局所心機能の改善が、レーザーによる新生血管の再生によるものと考えることはできなかった。 一方、臨床の例は、心筋梗塞後の狭心症にたいして、冠動脈バイパス術と併用してレーザー血行再建術を施行したが、これらの症例では、術後漸次良好な心機能の改善が認められた。しかし、症例により改善の程度の幅があり、この改善がレーザーによるものであると断定できなかった。 今回の我々の研究からは、レーザーによる心筋血行再建は、その効果を確実には証明することが出来なかった。 その原因は、いくつか考えられる。使用したレーザーがNd-YAGのため熱を発生し、血行再建後に閉塞した可能性がある。また、レーザー自身の効能効果に、安定した血行再建能力が無い可能性も否定できない。そのため、今後は、新しい視点での血行再建の方法を考える必要がある。
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