Matrix Metalloproteinase Inhibitorを用いた転移制御に関する実験的研究を進めてきたが、前回報告したように実験過程で種々の問題が生じた。肺転移モデルの作製、生態顕微鏡による腫瘍血流の観察が計画通りに行えなかった点と、マトリックスメタトリックスメタロプトテイナーゼ阻害剤の入手、すなわちBritish Biotech社から譲渡予定であったマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(Marimastat)の入手が困難となった事などが発生し実験計画を変更せざるを得なくなり途中から"ラット肺転移モデルにおけるPulmonary Artery Infusion Technique(一側肺動脈薬剤注入法)における抗主要効果の検討"に関する実験的研究を行った。本研究は再現性のある肺動脈血流優位の肺腫瘍モデルを作製することに重点をおき、このモデルを用いた転移性肺腫瘍に対するPulmonary Artery Infusion Technique(PAI)の抗癌治療としての有用性について検討した。その結果、open lung injection法により均一の肺腫瘍モデル作製が出来、本肺腫瘍モデルの支配血流が肺動脈である事も証明でき、本実験系でのPAIの有効性も明らかにされた。本研究結果は肺動脈経由の肺腫瘍治療法の今後の臨床応用の可能性を示すものであり、反復する治療施行が可能なPAI法の将来性が期待されるものとなった。
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