研究概要 |
1.肺癌局所における特異免疫の存在 上皮性悪性腫瘍に対する特異免疫の存在の有無を明らかにする目的で肺癌浸潤リンパ球内にHLA-クラスI拘束性キラーT細胞が存在するか否かを検討した。その結果、肺腺癌、肺扁平上皮癌いずれにおいても癌局所にHLA-クラスI拘束性キラーT細胞は存在した。HLA-A2拘束性肺腺癌の特異的キラーT細胞は、少なくとも6種類以上の癌細胞抗原ペプチドと認識していた。一方、HLA-A24拘束性キラーT細胞の多くは腺癌と扁平上皮癌に共通な抗原ペプチドを認識していた。以上より上皮性癌においてもメラノーマと同様に癌局所に特異免疫(キラーT細胞)とが存在することが示唆される。これらの事実は腫瘍特異免疫療法の科学的根拠を与えるものと考えられる。 2.HLA-A2402拘束性肺腺癌拒絶抗原遺伝子クローニングと抗原解析:これまでにHLA-A2402拘束性肺腺癌由来CTL株を用いて、それの認識する抗原をコードする4つの遺伝子をクローニングした。そのひとつは既知の分子イムノフィリンであり、他は新規の分子(ART-1,ART-2,ART-3)であった。既知の分子及びART-1についてはペプチド分子を同定した。それらのCTL誘導能、またART-2,ART-3分子については全塩基配列の決定、mRNA及び蛋白レベルでの各種組織、癌細胞における発現、さらにはCTLにより認識されるペプチド構造を決定中である。
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