研究概要 |
肺気腫に対する外科治療法の中で主に胸腔鏡と胸骨正中切開によるVolume reduction surgery(VRS)とを比較検討した。手術適応基準は以前より報告してきたものに従い決定した。評価方法は術前術後に画像診断に肺換気、血流シンチを加え、機能検査では一般肺機能検査、動脈血ガス分析、運動負荷試験を行いあわせて心機能評価のために心エコーや右心カテーテル検査をおこなった。 結果 1) 術式別で両側手術法は片側手術に比べFEV1.0にして2倍の呼吸機能の改善がみられた。また肺気腫病態をしめす過膨張所見(TLC,FRC,RV)も両側手術が術前に比し優位に良好であった(P<0.01) 2) 両側手術法別の比較では胸骨正中切開が胸腔鏡手術より出血量にして7倍、鎮痛剤の使用で3倍多く、患者に対する侵襲が大きかった。すなわち胸腔鏡手術が負担の少ない手術であると考えられた。 3) 切除量と機能改善率は相関したが、過度の切除は術後人工呼吸器装着期間が延長する傾向にあった。各手術法間では術後合併症に優位な差はなかった。 4) 術後一回心拍出量や全肺血管抵抗が改善することにより、進行した肺気腫患者の循環機能も改善される可能性が示唆される。 5) 全手術患者に占める60歳以下の若年性肺気腫患者の割合は11%で、いずれも両側手術でFEV1.0にして62.6%の改善をしめしたことより今後、移植までの治療法として選択できるものと考えられた。 6) 術後の機能維持期間について評価をおこなっているが現在のところ、2年までは術前より良好な維持ができると思われる。
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