研究概要 |
【目的】本研究では膠芽腫細胞に対する重粒子線の生物学的効果を解析してきたが、脳腫瘍に対する治療効果判定では、増殖が停止するのみでは有効とはされず、細胞死による腫瘍サイズの縮小が不可欠である。しかし、膠芽腫細胞は放射線に対する感受性が低く、低LETのγ線ではapoptosisは生じないとされ、それに対し、高LETの重粒子線のよりcytosidalな効果が期待される。そこで今年度は細胞死をend-pointとしたときの重粒子線の膠芽腫に対する生物学的効果を検討した。【対象、方法】2種類のp53野生株(A-172,U87MG)と2種類のp53変異株(U251MG,TK-1)を対象とした。γ線または290MeVの炭素粒子線を照射後経時的に細胞死の出現を、DNA histogram、色素排除法にょる全死細胞の出現率、核の染色によるapoptosisの出現率によってモニターした。また観察時点でのp53の発現をImmuo-blotにて明らかにした。使用した炭素線のLETは20、40、80KeV/umである。また線量は全て10Gyの単線量を用いた。【結果】照射後10日目まで観察したが、γ線照射後p53野生株では12%から35%の細胞死を認め、変異株では10%から25%の細胞死を認めた。しかし、いずれの細胞にもapoptosisは認めなられなかった。それに対して炭素線照射ではp53野生株では平均25%から62%の細胞死を認め、変異株では22%から48%の細胞死を認めた。DNA hisotgramにおけるsub Go,Glpeakも同様な結果を示し、細胞死は照射後4日目以降に出現した。そのうちapoptotic ce11は全細胞死の13〜17%を占めることが明らかとなった。またp53野生株のほうがapoptosisは若干多く出現したが、今回用いたLETの範囲では明らかなLET依存性はなかった。【結論】膠芽腫細胞株では放射線照射後、細胞死は4日以降にゆっくりと出現することが示された。また、LETの低いγ線はapoptosisを誘導しないが、炭素粒子線では細胞死の13〜17%はapoptosisであることが明らかになった。またこの誘導にはp53の関与は少ないと考えられ、経時的なDNA histogramから考えると膠芽腫細胞株ではdelayedinterphase cell deathが起きていると考えられた。
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