研究概要 |
今年度は、 (1)入院症例の悪性脳腫瘍計36例(初発25例:悪性16、良性9:再発11例:悪性10、良性1)の内、同一患者で、2回の手術が行われ、しかも2回とも同じmonostemline cellからなる腫瘍5例(膠芽腫3、悪性髄膜腫2)について、初回治療後の再発腫瘍内に発現する各治療抵抗性因子(細胞膜、ミトコンドリア、核膜等の防御因子であるGST-π,Cu/ZnSOD,bcl-2やP-53,MIB-1)の出現程度と再発後の増悪までの期間との関係、 (2)ラジカル増感剤としてのビタミンK2の殺細胞ラジカル効果のin vitro研究を検討した. (方法) (1)昨年と同様の染色法を用い、陽性細胞の発現の程度を、全体の細胞に対する陽性細胞の割合によって、無(0%):0、軽(0-30%):1、中(30-60%):2、高(60-100%):3の4段階にスコア分類した.stemlineの分類はG2M DNAploidyにおけるtetraploidy patternを用いた(J Neuro-oncol26:1-9,1995).治療予后は、放射線や化学療法後の再発、再再発までの期間や画像でTTP(time to tumor progression)評価した.(2)ヒトGlioma細胞由来のT98G,RBR17T細胞を用い、vit.K2単独、抗癌剤との併用等を行い、細胞増殖抑制効果、細胞周期への効果、アポトーシスとの関連等を検討した.(結果及び考察) (1)1.再発腫瘍においてCu/Zn SODの発現が低くても短いTTPを示した例もある。2.GST-piの発現は、膠芽腫において初回手術組織よりも再発手術組織に於いて高発現している例があり、その例は再発後のTTPが短い。3.bcl-2に於いては、神経膠腫、髄膜腫共に再発腫瘍組織での、初回手術組織に比した高発現はTTPが短い。4.神経膠腫に於いて、単一クローンからなる腫瘍の治療予後因子は、GST-pi,bcl-2発現の程度にかかっており、単一クローンからなる腫瘍の場合には、集学的な治療で、徹底的に行う事が必要と示唆された。 (2)1.vit.K2濃度依存的に細胞増殖抑制効果を認めた。2.それらの殺細胞機序はDNAの断片化とラダーからアポトーシスを示唆した。3.細胞周期に対しては、G0G1期集積を示した.4.これらの事は、vit.K2がアポトーシスを介して殺細胞効果に寄与していると示唆された. 今後さらに、これら抵抗因子の発現機序を研究し、その対策にスカベンジャーとの相互作用を定量的解析も含めて研究する必要がある.
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