本年度は脳微小循環に対するポタシュウムチャンネルの役割を検討するため、脳実質内細動脈の各種Kチャンネル阻害剤に対する反応を検討した。 ラットの中大脳動脈領域から脳実質内細動脈を摘出し倒立顕微鏡上の組織槽内でカニュレーションを行なった。血管内圧を60mmHg加えた後、温度を摂氏37.5度まで上昇させると自発張力が出現し血管径は安定した。次に、脳内細動脈の血管径と同時に細動脈平滑筋細胞の膜電位を測定した。硝子管より作製した電極にポタシュウムアセテートを満たし、Ag-Agcl線のついたテフロン電極ホルダーに固定した。これを増幅器に接続し、電極は顕微鏡下にカニュレーションされた血管に進め血管壁に接触させた後、電動パルスマニピュレーターを使用して平滑筋細胞内に刺入した。ここで電位が安定したところで膜電位の測定を開始した。 ATP-感受性ポタシュウムチャンネル阻害剤であるglibenclamideを10μM投与すると血管径は59.0±13.1μm(n=10)より5.1%の収縮をおこし膜電位は-33.3±4.2mVの静止電位より-29.7±3.6mVへと有意に脱分極した。一方一酸化窒素(NO)の合成阻害剤であるLNG-monomethyl-L-arginine(100μM)の投与では膜電位はほとんど変化を示さなかった。 以上より、脳細動脈の基礎的血管径の維持にはATP-感受性ポタシュウムチャンネルが関与していることが示された。
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