遺伝子治療をより安全にしかも効果の期待できる治療法にするためには遺伝子の発現調節機構の開発は重要である。そこで本年度は昨年度に引き続きheat shock protein promoterやテトラサイクリンの誘導体(ドキシサイクリン)とTet repressor geneとの組合わせを利用した遺伝子発現調節システムの開発を押し進めた。(1)heat shock protein(HSP)70B promoterを用いた遺伝子発現制御機構の開発:HSP70Bのpromoterでドライブされるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子あるいはインターフェロン-β遺伝子をアデノ随伴ウイルス(AAV)に組込んだAAWベクターを作製した。これをヒトグリオーマ細胞に感染させ、遺伝子発現効率をトガラクトシダーゼ遺伝子で、抗腫瘍効果をインターフェロン弔遺伝子でそれぞれ評価した。その結果、39℃、8時間の加温によりβ-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現は数十倍に増強されることが確認された。一方39℃、8時間の加温によりインターフェロン-β遺伝子の発現増強が観察され、著明な抗腫瘍効果が誘導できた。この抗腫瘍効果は温熱誘導をかけずに、SV40プロモータでドライブされるインターフェロン弔遺伝子を単独で遺伝子導入したときより有意に強かった。(2)Tet repressor systemを用いた遺伝子発現制御機構の開発:本年度は昨年度調製したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクタープラスミドpVtetO-LavZとVrtTAのドキシサイクリンによる発現状況をin vivoで観察した。ヌードマウスの皮下に移植されたヒトグリオーマ細胞に上記ベクターをリポソーム法で導入し、ドキシサイクリンを与えることでその遺伝子発現を確認した。
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