研究概要 |
妊娠9日目のウイスターラット腎に対する抗体(ARKS)をウサギで作成し、これを妊娠9日目のウイスターラットに投与し、congenital hydrocephalusを誘発した。 癌遺伝子の発現については、S-myc,ras,C-mycやRBの発現はなく、P53 wild typeのみが発現されており、このP53は障害された核を修復するために動員されているものと考えられた。また細胞増殖関連抗原のうちMib-1、Ki-67の発現はなくPCNAのみが確認された。PCNAの発現は対照群で高く、APRK投与群ではAPRKが胎盤、羊膜、卵黄嚢膜、中枢神経管上皮細胞の増殖を抑制しているものと考えられた。染色体異常の有無に関しては専門の研究施設に外注して検索したが、この時点での染色体異常は検出されなかった。 妊娠を一種の臓器移植とみなした場合、抗妊娠ラット腎血清に感作された臓器および細胞がどのような免疫応答を示し奇形発生へと発展して行くのか検討した結果、 T-cell,B-cell,macrophage抗原はAPRK投与ラットの子宮、胎盤、羊膜に発現していたが、生食水を投与した対照ラットには存在しなかった。細胞性免疫の胎仔への直接作用は証明されなかったが、子宮、胎盤、羊膜での免疫応答が間接的に胎児水頭症の発現を促進しているものと考えられた。 ARKS投与ratにおける奇形発生の機序を接着因子との関連で検討した結果、neural tube defect fetusではconcanavalin Aやwheat germ agglutininの発現が対照よりも多く、しかもextra-cellular spaceに蓄積しており、このことが接着不全を起して脊椎破裂が発現するものと考えられた。 神経管癒合不全に関しては、アポトーシスの関与も考えられるため、Fasやbcl-2の発現やTunel法によるDNAの断片化などの検索を行ったがこれらの発現は証明されなかった。
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