研究概要 |
Basic fibroblast growth factor(bFGF)は中枢神経系細胞に対する種々のストレスに応答して産出され,神経細胞に対し保護的に働く.局所脳虚血において発症24時間後のbFGF投与で梗塞巣の大きさには変化がなくても神経機能的な回復には有意に効果があると報告されている.本研究ではbFGFによる虚血後神経機能回復の機序の解明するために,シナプス形成,特に機能的シナプス形成に注目し,bFGFによる虚血性ストレスの亞急性期から慢性期にかけて神経細胞突起の伸長やシナプスの形成および機能の効率化を促進することによって神経機能の回復に関与するという仮説を証明するのが目的である.今回の実験系であるラットのニューロン・グリア共培養での基礎実験として,細胞内カルシウム多点同時測定データを収集した.皮質ニューロンを用いると共培養14―17日後に神経細胞の同時興奮が最も強くなった.さらに一酸化窒素の神経細胞の同期性興奮の対する影響も調べたが,一酸化窒素合成酵素阻害剤の慢性投与により神経細胞間の興奮伝達に変化が現れることが明らかにした.しかしながら,シナプトフィジンの定量より,この変化はシナプスの量の変化によるものではないこと,神経型一酸化窒素合成酵素および誘導型一酸化窒素合成酵素の発現にも差がないことをから,一酸化窒素は神経細胞間の同期興奮に関与しているが必須ではなく,他のpathwayの存在も考えられた.次にこの培養系を用いて低酸素負荷後のbFGFの発現または作用を慢性的にブロックし,神経細胞間のoscillationを測定しようと試みたが,うまくoscillationがとらえられず,有意な結果を得るには至らなかった.メディウム中への抗体投与に問題があったと思われる.今後この点に改良を加え,さらに検討を進めていく予定である.
|