肥満性星細胞腫は比較的希な腫瘍のため獨協医科大学の他Zurich大学(スイス)、Kiel大学、Munchen大学、Wurzburg大学(ドイツ)、Ludwig Boltzman研究所(オーストリア)より標本を収集した。H-E染色で肥満細胞の腫瘍細胞に占める割合(gemistocyteindex)は20.0-58.0%で平均35.0±9.9%であった。これまでの我々の研究と同様、肥満細胞はMIB-1モノクローナル抗体では殆ど陰性で、細胞回転に入らない休止期にとどまる細胞と考えられる、。MIB-1陽性細胞の割合が高く、核分裂像を認めるWHO grade IIIの腫瘍でも同様で、肥満細胞のほとんどはMIB-1陰性であった。p53タンパクに対するモノクローナル抗体PAb 1801ではほぼ全例で陽性細胞を含むため、連続標本よりDNAを抽出しp53遺伝子のExon5-8でSSCPを施行中である。SSCPのハンドシフトが高率に認められ、これまで報告されているWHO grade IIの星細胞腫より肥満細胞性星細胞腫では高率にp53 mutationを有することが予想される。今後、direct sequenceを行いmutationを確認する。また、最近第10染色体上にPTENという発癌抑制遺伝子と考えられる遺伝子が発見された。神経膠芽種の多くが第10染色体に異常を有することが知られているためPTEN遺伝子は神経膠芽種の発生に関与している可能性があるため、我々も、肥満性星細胞腫にてp53と共にPTEN遺伝子に関しても調査する予定である。
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