平成9年から11年12月までに獨協医科大学において治療された星細胞腫astrocytoma(WHO grade II)で悪性変化を来した症例は4症例であった。3例においてp53mutationの有無を検討したところ、3例ともmutationを認めた。悪性変化までの期間とp53mutationの局在に傾向性はなかった。しかし、初回手術が針生検の症例が2例であるが肥満細胞性と考えられた症例は1例のみであったが4例とも再発標本で肥満細胞は多数検出された。 また、退形成性星細胞腫(WHO grade III)、神経膠芽腫(WHO grade IV)などの放射線、化学療法後に再発した悪性神経膠腫の標本で、治療効果と思われる壊死巣の周辺にも肥満細胞がみられ、我々が発表した肥満細胞内で発癌抑制遺伝子Bcl-2が発現しapoptosisへの誘導が阻害せれている可能性が高いが、薬剤耐性遺伝子が発現し、肥満細胞内で薬剤濃度が上昇しない可能性も考えられる。 肥満細胞性星細胞腫では80%以上の症例にp53遺伝子のmutationが認められ、悪性変化しやすい性格に重要な役割を果たしていることがわかったが、p53mutationが存在しても、いつ悪性変化するか予測することはできなかった。今後は、p53mutationに付随する悪性へんかに直接関係する遺伝子の究明と、肥満細胞における薬剤耐性遺伝子の発現の検討が重要と考えられた。
|