研究概要 |
肥満細胞性星細胞種 gemistocytic astrocytoma(WHO grade II)は通常のfibrillary astrocytoma (WHO Grade II)より悪性変化しやすく予後不良と考えられていたが、肥満細胞の生物学的特性は究明されていない。我々は、星細胞種調査中にp53の免疫組織化学を行うと、肥満細胞は陽性となる割合が高いことを発見した。そのため、悪性変化をきたした星細胞種の症例40例でp53mutationの有無とp53,bcl-2,MIB-1モノクローナル抗体を5%以上の腫瘍11例では全例p53 mutationを認めたが5%以下の腫瘍では61%であった。(p=0.017)。免疫組織化学的検討で、p53の肥満細胞Llは平均7.4%で腫瘍平均の3.2%より有意に高値を示した(p=0.0002)。一方、MIB-1では肥満細胞のLlは平均0.5%で、腫瘍平均の2.6%より有意に低かった(p<0.0001)。GemistocyteのほとんどはMIB-1で陰性で、細胞回転に入らない休止(G_0)期に留まる細胞と考えられた。 肥満細胞が主体の星細胞種を肥満細胞性星細胞種というが、肥満細胞性星細胞種と診断された腫瘍を収集し発癌抑制遺伝子p53 mutationは28例中23例(82%)で検出された。一方PTEN mutationを認めた症例はgrade IIの腫瘍では15例中0例、grade IIIの腫瘍では11例中2例(18%)であった。 肥満細胞はp53 mutationを効率に含むと考えられるが、bcl-2遺伝子の発現でapotosisへの誘導が阻害されているである可能性が示唆された。肥満細胞性星細胞種ではp53 mutationが特徴的な異常と考えられたが、PTEN遺伝子の異常はほとんど認められなかった。
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