研究概要 |
ラット一側中大脳動脈永久閉塞モデルを作成し、閉塞直後から6時間の選択的中等度脳冷却を行い、その効果を6時間・24時間・48時間の時点で評価した。73匹のSDラットは、全身麻酔下に、左中大脳動脈(MCA)を露出後閉塞(MCAo)し、以下の3群に割り付けた。A群=低脳温,B群=正常脳温,C群=sham。A群はMCAo直後から0度の氷水を潅流した表面コイルを用いselective brain hypothermia(SBH)を6時間行い,B及びC群では正常脳温を持続した.これら3群を上記の3つの時点で潅流固定後、H&Eにて染色した.低脳温の効果に関しては,左半球体積と梗塞体積を計測しその比(梗塞率)を各群間で評価した。A-48時間群でSBH後1時間のみに約1度の体温下降を見た以外,体温は正常域に維持された.脳温はA-6時間群では30度,A-24時間群では31度にSBHの間維持され,A-48時間群ではMCAo後2時間は28-29度,それ以後は30-32度に保たれた.B&C群の脳温は35-37度であった.平均血圧は全群麻酔中低下傾向であったが,90mmHg以上は維持され,特に低脳温群で低いということもなかった.血液ガス分析ではPaO2の群間有意差は認めなかった.BaseExcessは全群徐々にacidosisに傾く結果となったが補正可能であり,これを反映してPaCO2も徐々に低下傾向となった.共に各系のAB群間に有意差は認めなかった.48時間まではmild SBHの効果は保持できた.その保護効果は虚血辺縁である皮質に強かったが,虚血中心である基底核にも及んでいた.血液検査上も同群で脱水傾向となったが腎機能に影響するほどではなかった.また全群で開頭術に伴う唾液腺アミラーゼ値の上昇を見た。今回の結果は、虚血直後からの6時間のmild SBH(脳温28-32度)の効果は、虚血後48時間まで持続することを示している.
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