研究概要 |
1.東京都立墨東病院,日赤医療センター,武蔵野日赤病院,および埼玉医科大学で手術を行った頭蓋内胚細胞腫瘍,計4例を培養系に移した。うち1例が6ヶ月以上継代され,免疫細胞化学染色によってP53蛋白を発現しているとともにジャーミノーマのマーカーであるplacental alkaline phosphataseの発現も維持していることを確認した。残りの3例は継代の過程で死滅した。 2.埼玉医科大学および関連の病院から頭蓋内胚細胞腫瘍の収集に努め,現在までに新鮮凍結材料およびパラフィン包埋材料合わせて21症例を得た。まず免疫組織化学染色を行い,ジャーミノーマの8/8(100%),非ジャーミノーマ腫瘍の8/11(73%)にP53蛋白の発現を認めた。さらにP53によって誘導されると考えられているP21とMDM2蛋白についても検索したところ,ジャーミノーマにおいてはP21は0/6,MDM2も0/6と発現を認めなかったのに対して,非ジャーミノーマ腫瘍ではP21 4/10(40%),MDM2 5/9(56%)と約半数の症例でそれらの発現を認めた。従ってジャーミノーマと非ジャーミノーマ腫瘍との間でP53の状態(変異の有無と活性)に違いがあることが推測された。前者は極めて治療感受性が高く後者は症例によって治療感受性の高いものと低いものとが見られるという相違が,P53の状態の差異から説明される可能性が示唆され興味深い。次のステップとしてPCR-SSCPによるp53変異の検索を開始した。 3.細胞周期関連遺伝子の一つ,cyclin D2遺伝子の増幅の有無について検索した。ジャーミノーマでは4/6(67%),非ジャーミノーマでも4/6(67%)において2x-3xの遺伝子増幅を検出した。
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