研究概要 |
1. 頭蓋内胚細胞肺瘍の新鮮凍結材料およびパラフィン包埋材料合わせて34症例を収集した。 (1) まず免疫組織化学染色を行い,ジャーミノーマの15/15(100%),非ジャーミノーマ腫瘍の15/19(79%)にP53蛋白の発現を認めた。一方、P53によって誘導されるP21蛋白は、ジャーミノーマにおいては15例すべてにおいて発現を認めず,非ジャーミノーマ腫瘍では7/19(37%)の症例で発現を認めた。従ってジャーミノーマと非ジャーミノーマ腫瘍との間でP53の状態(活性)に違いがあることが推測された。 (2) 凍結材料およびパラフィン包埋材料からDNAを抽出し,血液白血球から抽出したDNAを対照としてp53のSSCP解析を行った.ジャーミノーマ4例,未熟奇形腫7例,絨毛癌1例,および胎児性癌1例の合計13例の解析の結果が終了し,現在までのところ1例もp53の変異を認めていない.従って,頭蓋内胚細胞腫瘍に認められるP53蛋白の蓄積の機序においても,また組織型間によるP21発現の差異においてもp53の変異は関与していないと考えられる. 2. ATCC,理化学研究所ジーンバンクおよびヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した6種類の胚細胞腫瘍細胞株を用いて,シスプラチンおよびエトポシドに対する感受性試験を行っている.また,同時に,各細胞株よりRNAを抽出し,野生型p53によって誘導され抗癌剤感受性に関与すると報告されているGML(glycosyl-phosphatidylinositol-anchored molecule-like protein)の発現についてRT-PCRの手法により解析中である.
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