研究概要 |
当該年度(平成10年度)は、ネズミ及び成猫を用い実験I,IIをおこなった。 実験I:ネズミ及び成猫の大槽内にカオリンを注入し、水頭症ネズミ・猫を作製し、頭蓋内圧 (ICP,Camino式)、脳血流(レーザー組織血流計によるCBF及びCBV)、NO産生量(電極法)、呼気CO_2分圧、大腿動脈圧を連続記録した。 脳内薬物注入のICP,CBF,NOに対する効果: (i)ネズミのマイネルト核,無名質,プロカの対角帯核にAchを微量注入すると、ICPの上昇,血圧の一過性の低下,CBFの低下,CBVの増加が惹起された。ICPの上昇,CBVの増加に一致し“NO"産生量の軽度の上昇が認められた。 (ii)ネコの視床下部背内側核へのAchの微量注入でもICPの上昇,CBVの増加とともに“NO"の軽度の上昇が惹起された。これらの結果から前脳基底部コリン作動系の賦活により大脳皮質あるいは海馬の血管拡張が生じたが、これは前脳基底部Ach neuronが大脳皮質内,血管近傍の一部No neuronに投射し、これを介して脳血管拡張をもたらしているものと推察された。 実験II:脳低温が脳血管緊張,脳血流,脳代謝にどのように影響するのかを調べた。成猫を用い、CBF(水素クリアランス法),AVDO_2とScvO_2(上矢状洞からのblood sample)からCMRO_2とCVRを計算、CBV(^<99m>TC-HSA-D)も測定した。脳温を37℃から25℃まで下降させた。CBF及びCMRO_2は25℃で低下し、AVDO_2は31℃で有意に上昇し、CBVとCVRは29℃でそれぞれ有意に低下,或いは上昇を示した。即ち脳低温でmisery perfusionが惹起されることが判明した。これに対し、noradrenalinを投与しながらのhypothermiaはischemic parameterを有意に改善したが、barbiturateの投与はmetabolic parameterを改善しなかった。hypothermiaはvasoconstrictionを惹起し、脳をmisery perfusionの状態に陥らせる危険性があり、これに対してはhypothermiaと同時にvasopressor剤の投与が有効であることがわかった。
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